記憶の河

今にもその手から、するりと落ちてしまいそうな断片をしがみつくように握りしめてわたしは毎夜眠りにつく。たよりのないからだで時間を弄って視ると、奇妙に生々しい腐敗した浅黒い手がくたりと一本伸びてきて、わたしを一瞬にしてひきずりおろした。

すべての光が、闇が、激しくもまたゆるやかに時間を失い漂う記憶の河の中にいた。みてはいけないと、目を伏せるのに、それに反して頭蓋はぱっくりと顔を拝ませ、どくどくと呑み込んでしまう。お腹が膨らんでいく、今にもはち切れそうだ、眼からは涙とともに溢れ出す。ぱちんという音を立て、一瞬にして爆発し、身体は散らばった。

あれから何時間、いや、何日経ったろうか、わたしはどこまでも深くゆっくりと落下していた。もう吞み込んでいるのか、呑み込まれているのかもわからない、わたしは穏やかな安らぎの恐怖に包まれていた。